HOME > 健康の雑学 > 【2008年3月号】日本と世界の「座る」歴史


人類史の始まりとともに生まれた「座る」という行為。紀元前3000年頃に「椅子」が生まれる一方、東洋では床にそのまま「座る」文化が、その土地の風土や気候にともなって育まれてきました。単に「腰掛ける」のであれば切り株で充分。そこから「座り心地」や、座る人の健康までを考えて発展を遂げてきた「座る」文化についてご紹介しましょう。

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その後、椅子に施された装飾は時代ごとに派手になったり、逆にすっきりする等を繰り返して発展してきました。 |
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一方、日本はどうか?椅子をかたどった埴輪や丸太をくりぬいた椅子らしきものが出土していることから、一部儀式などで使われていたと推測されています。また、足が「X」字になる折り畳み式の椅子は、戦国時代になると「床几 (しょうぎ)」と呼ばれ、武将が戦陣で座る椅子として使われていました。
しかしご存知の通り、日本は「畳」の文化です。庶民が「椅子に座る」ことは、家の縁側や縁台、茶店などの外食時に使用する「腰掛け」などに限られていました。古来から男性の一般的な座り方といわれているのは「あぐら」。しかし「あぐら」の「ぐら」は「座(くら)=高い位置」を意味するため、本来は椅子のことを指していたとのこと。今でいうところの「あぐら」は「足組む(あぐむ)」といわれていたそうです。
そして、室町時代になって茶の湯が普及するなかで生まれていったのが「正座」。家の中に畳が敷き詰められるようになったのも同じ頃です。ただ、茶の湯をふるまう側は正座でも、招かれた側はあぐらをかいているケースが当初は一般的だったといいます。いわゆる「正座(正しい座り方)」とみなされたのは江戸、明治になってからのことでした。
今、椅子の文化が普及した日本では、長時間正座できる人は限りなく少なくなりました。科学的にも血流を妨げ、膝に負担がかかるといった説もあります。しかしこの点は、いにしえの人も気づいていたこと。日本では13世紀頃から普及した「座禅」をする際、禅僧は臀部の下に「座蒲(ざぶ)」を敷きました。これにより、骨盤が後傾になるのを避け、脊柱が正しい位置を保つことができ、足や体への負担が軽減されます。今でいうところの人間工学的な「理」にも叶っていたのです。
現在では機能性を備えたクッションなど、さまざまな「座り方」をしたときに負担を和らげるアイテムが多く出ています。自分なりに心地よい座り方をして、日々を元気に過ごしましょう!


1929年、バルセロナ万国博覧会のドイツ館に出現した、「スペイン国王が座るために作られた」椅子。20世紀を代表する建築家、ミース・ファン・デル・ローエの作品です。ミースは秩序を重んじる“機能主義”の建築家。単に豪華だったり意匠を施してあるのではなく、座り心地などの機能を重要視し、「工業」と「芸術」を両立させようと試みた人物です。バルセロナチェアーは、機能と「王様が座る」威厳、その両方を兼ね備えた美しい椅子として、今もなお、その価値が認められています。
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■ ハーマンミラージャパン株式会社
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